「冬のDigi田甲子園」優勝 「福井県交通安全マップ」
あいおいニッセイ同和損保は、地方自治体と連携し、交通事故防止に向けて地域における交通事故の危険エリアの「見える化」に取り組んでいます。カギとなるのは、テレマティクス自動車保険を通じて得た走行データです。自動車走行のビッグデータとして分析し、地域の交通安全に向けて活用しています。
こうした取り組みは、2022年3月にあいおいニッセイ同和損保が福井県、福井県警と連携し、交通事故が起こった場所や急ブレーキなどの危険運転が発生した地点を交通事故の危険エリアとして知らせる「福井県交通安全マップ」を作成したことをきっかけに本格化しました。
従来、地域の交通安全対策では、過去に起きた事故の発生場所について注意を呼びかけることが一般的でした。これに対して、テレマティクス自動車保険の走行データからは、自動車の走行距離や経路、走行時間帯をはじめ、急ブレーキ、急発進といった車両の挙動を秒単位で把握できます。交通事故と相関関係の強い急ブレーキの多発地点など、新たに交通事故発生の潜在リスクがある場所を地図上に示すことができるようになったのです。
このように、交通事故発生の潜在リスクについて把握することで、注意喚起により事故を未然に防ぐとともに、交通規制などの対策の後押しや対策の効果検証を行ったことが評価され、福井県交通安全マップは、2022年度の「冬のDigi田甲子園」(内閣官房主催)で優勝し、内閣総理大臣賞を受賞しました。
事故発生と相関関係 急ブレーキの多い地点を見える化
あいおいニッセイ同和損保は、全国各地の支店が中心となって、管轄地域の地方自治体と連携し「交通安全マップ」を作成しています。各地域で参加者を募り、一定期間テレマティクス自動車保険専用の小型車載器を自家用車に搭載して、テレマティクス自動車保険のサービスを体験してもらいます。と同時に、あいおいニッセイ同和損保は、参加者の許可を得て走行データを取得します。このデータをもとに、急ブレーキの多発地点をはじめ、地域における交通事故の潜在的危険地点を地図上に示します。さらに、信号や道路標識を設置するといった対策による事故の削減効果も検証できるようにしています。
千葉県内では、小学校の通学路の安全点検について分析し、学区内を高速で走行した車両、通り抜け車両、急ブレーキの有無を調査し、幹線道路への通り抜けを目的とした車両が高速で小学校周辺を通過している実態を明らかにしました。また道路に横断歩道やガードレールを設置するといった安全対策の効果を検証しました。
小学校付近を対象に実施した走行車両の急ブレーキの回数の調査結果
このようにあいおいニッセイ同和損保は、テレマティクス自動車保険の走行データを活用し、地方自治体の交通安全対策を支援しています。利用した地方自治体からは「データのエビデンスがあることにより、住民からの陳情だけではわかりにくかったことが、より正確に行政や警察につたわるようになった」との反響を得ているといいます。
あいおいニッセイ同和損保デジタルビジネスデザイン部データソリューショングループの豊辺将嘉・主任スペシャリストは「テレマティクス自動車保険の走行データは、生活道路の走行状況について秒単位で細かく見ることができるのが強みです。走行データに国のオープンデータなどを組み合わせると、新たな発見があります。自動車交通にかかわる、さまざまな社会課題の解決につなげていきたい」と今後の展望を語ります。
急ブレーキの多い意外な時間帯が…心理面からも分析
あいおいニッセイ同和損保は、テレマティクス自動車保険の走行データについてあらゆる角度から分析を進めており、ドライバーの心理面にも着目しています。
東京都内の走行車両の分析結果からは意外な傾向が明らかになりました。
「6時~9時」、「9時~12時」、「12時~14時」、「14時~16時」、「16時~19時」等と時間帯別に分析を実施。6時から19時に限ると、急ブレーキが最も多くなったのは、14時~16時でした。交通量が多い朝のラッシュ時にあたる6時~9時と比較すると、走行車両の平均速度や道路の混雑度に大きな差はないものの、急ブレーキの回数は14時~16時が15%以上多くなっていたのです。
データを分析したあいおいニッセイ同和損保デジタルビジネスデザイン部データソリューショングループの日野原弘幸・上席スペシャリストは「交通量が多いほど車間距離が縮まりやすいため、朝夕の通勤ラッシュ時は急ブレーキが多発すると予測していました。実際には、朝と夕のラッシュの合間で、交通量が少し落ち着くと考えられる14時~16時が最多でした」と語ります。
朝夕の通勤ラッシュ時は、道路を走行する車両が途切れなく進んでおり、走行車両全体の速度が一定に保たれやすく、急ブレーキが起こりにくい環境となっている可能性があります。また14時~16時は、昼食後のタイミングで眠気が襲いやすく、認知が低下しているということが影響していることも考えられるといいます。日野原・上席スペシャリストは、「走行する時間帯や道路環境、ドライバー心理についてさらに詳しく分析すると、時間帯に応じたより精緻なリスク予測モデルを構築できるのではないでしょうか。将来的には、ドライバー個人により寄り添った注意喚起、アラートによって事故を防げるのではないか」と期待を寄せています。
時間帯別の急ブレーキの回数を国土交通省のオープンデータ「道路交通センサス」の交通量を使って比較
また、分析結果について、日本交通心理学会事務局長の中井宏・大阪大学大学院准教授は、「とても興味深いデータです。人間には生活サイクルがあり、昼食後など午後の時間に仕事のパフォーマンスが下がるといった調査結果もあります。朝夕と比べて総数としては事故が多くない日中の午後の時間帯*でも急ブレーキの件数は多い。日中の午後の時間帯の事故のリスクの可能性が高いことをもっと広く知ってもらいたいです」とその意義を説いています。
14時から16時は小学生の下校時間と重なっています。特に小学校低学年は、視野の狭さや注意力の未発達、行動の予測が難しいことから交通事故に巻き込まれるリスクが高いとされています。中井准教授は、「小学生が交通事故にあうことが多いのは、圧倒的に放課後、下校時です。日中の安全そうな時間、油断している時間に急ブレーキが多発していることをドライバーに周知する必要があります」とこうしたデータの情報発信の重要性を強調しています。
そのうえで「契約者の方々の走行データを集めることで危険運転が発生した、ヒヤリ、ハットの地点が見えるようになります。国、地方自治体など道路管理者に事故の危険を知らせるとともに、ドライバーに対しては、データから得られた知見を生かして『午後は午前に比べて車間距離を広めにしましょう』といった具体的なアドバイスを送るとよいでしょう」と述べています。
*出典:交通事故総合分析センターの集計(令和7年版)
走行データの活用さらに 社会課題の解決へ地域還元
あいおいニッセイ同和損保は近年、テレマティクス自動車保険で得た走行データについて、自動車と歩行者や自転車とのすみ分けといった中心市街地での道路の使われ方の検証など、まちづくりのサポートに活用領域を広げています。
このほか、車両の走行速度、上下振動のデータから車両が受けた衝撃や振動状況を可視化することで、路面の異常箇所を検出する「路面状況把握システム」を開発。目視でわかりづらい路面の異常を見つけ出し、道路の効率的な維持管理を実現しています。地震など災害発生時には、「どの道なら安全かつ安心に移動できるか」を把握し、復興の支援につなげています。
あいおいニッセイ同和損保のテレマティクス自動車保険の走行データ活用例
あいおいニッセイ同和損保が走行データを活用する背景には、「テレマティクス自動車保険では、契約者の方々が毎日走行されることで、データが蓄積されています。いただいたデータを社会課題の解決に役立てることで、地域に還元していきたいと考えています」(豊辺・主任スペシャリスト)という企業姿勢があります。今後もテレマティクス自動車保険の契約者の方々の走行データに、さまざまなデータやデジタル技術を掛け合わせて新たなサービスを生み出し、社会の安全・安心を支えていく考えです。
データ分析について語る日野原上席スペシャリスト(左)と豊辺主任スペシャリスト
(取材・記事製作:YOMIURI BRAND STUDIO / 読売新聞社)
▼こちらの記事もおススメです▼

