トンネル内での追い越しは違反?
そもそもトンネル内で追い越しをしてもよいのでしょうか。ここでは、トンネル内での追い越しについて解説します。
原則は道路交通法で禁止されている
日本は山地が多い地形です。そのため、走行中にトンネルを通る機会は少なくありません。トンネルは一般的な道路よりも視界が悪く、風景が単調で圧迫感があるため、早く抜けたいという心理が働きやすい場所です。しかし、道路交通法第30条の「追い越しをしてはならない場所」として、トンネルの追い越しは認められておらず、原則追い越しはできません。
追い越し禁止のトンネル
追い越し禁止のトンネルは以下のとおりです。
・片側一車線で車両通行帯がない
・片側二車線以上あるが、追い越し禁止標識がある
・片側二車線以上だがセンターラインが黄色
特に、片側一車線のトンネルは車線をはみ出すと対向車と正面衝突する可能性があり、非常に危険です。基本的にトンネルでの追い越しはやめましょう。
トンネル内での追い越しに対する罰則
追い越し禁止のトンネル内で追い越しをすると、道路交通法第119条により、3か月以下の懲役または50,000円以下の罰金が科せられる場合があります。
また、行政処分として違反点数2点と、反則金が課せられます。反則金は車両の種類によって異なり、以下のとおりです。
・大型車:12,000円
・普通車:9,000円
・二輪車:7,000円
・原付:6,000円
トンネル内での追い越しが禁止されている理由
トンネル内での追い越しが禁止されている理由は、一般道に比べて事故が起こりやすい要因が複数あるためです。
トンネル内は一般的な道路よりも見通しが悪く、追い越しによって正面衝突のリスクが高まります。また、出入り時に明るさが変わることで、目が慣れるまでに時間がかかることも事故が起こりやすい理由の1つです。
運転していても気づきにくいですが、トンネルは水捌けのためにわずかながら入口が上り坂、出口が下り坂になっている場合があります。これにより、車間距離が詰まりやすくなる傾向があります。
追い越しできるトンネルもある
前述したように、原則としてトンネル内での追い越しは禁止されていますが、条件によっては追い越しできるトンネルもあります。
例えば、片側二車線以上かつ白線で区切られている場合には、追い越してよいケースもあります。
ただし、明確な条件が法律で決められているわけではなく、追い越しの可否はトンネルによって異なります。
追い越し・追い抜きの違い
追い越し・追い抜きの違いは車線変更を伴うかどうかによります。ここでは、追い越し・追い抜きの違いを解説します。
追い越しの定義
道路交通法第2条21の定義によると、追い越しとは以下のような行為を指します。
「車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。」
追い越しをする際には、追い越す車両の右側を通る必要があります。つまり、
追い越しとは車線変更をして元の車道に戻ることで前の車の前方に出ることを指し、進路変更を伴わない場合には追い越しには当たりません。
※引用: 道路交通法 | e-Gov 法令検索
追い抜きの定義
追い抜きには道路交通法上の明確な定義はありませんが、一般的には、進路(車線)変更せずに前の車の側方を通過して前に出ることを指します。
例えば、前の車が右折待ちで停止している時に左側の空間をそのまま直進した場合は、車線変更をしていないので追い抜きに分類されます。
トンネル以外の追い越し禁止場所
トンネル以外でも追い越しが認められないケースがあります。ここでは、追い越しができない場所や追い越し禁止の道路標識について解説します。
追い越しが禁止されている場所
追い越しが禁止されている場所は、以下のとおりです。
・標識で追い越しが禁止されている
・道路の曲がり角付近
・上り坂の頂上付近
・急勾配の下り坂
・交差点とその手前から30m以内
・踏切とその手前から30m以内
・横断歩道とその手前から30m以内
・自転車横断帯とその手前から30m以内
これらの場所は道路交通法によって追い越しが禁止されているため、追い越しをしてはいけません。
追い越し禁止の道路標識
追い越し禁止の道路標識は2種類あります。
・「追越し禁止」:右側にはみ出さなくても追い越しは禁止
・「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」:右側にはみ出さなければ追い越し可能
場合により追い越し禁止となる状況
追い越し禁止ではない場所でも、場合によっては追い越し禁止になることもあります。
・二重追い越し:前の車が追い越しをしている最中に、その車をさらに追い越す行為
・前の車が進路変更しようとしている場合
・反対方向からの車両進行を妨げる場合
・前の車の進行を妨げないと道路左側に戻れない場合
・後方の車が自分の車を追い越そうとしている場合
追い越しルールのセンターラインによる違い
白色の破線
白色の破線とは、センターラインがつながっておらず、等しい間隔で切れ目を入れた線のことです。白色の破線の場合には、センターラインをはみ出して追い越しが可能です。
また、白色の破線と黄色の実線が組み合わさっていることもあります。この場合は、白色破線側ははみ出しが可能で、黄色実線側からははみ出し不可です。
白色の実線
白色の実線とは、白いセンターラインがつながっているタイプのものです。車両通行帯境界線を表し、車線変更が禁止されているため、センターラインをはみ出しての追い越しは禁止です。
黄色の実線
黄色の実線とは、黄色いセンターラインがつながっているタイプのものです。中央線を表しているため、対向車線にはみ出すことが禁止されています。対向車と衝突する可能性があるため、はみ出して追い越してはいけません。
車線変更を伴わない追い抜きは合法です。
白色の破線と黄色の実線が組み合わさっていることもあります。
この場合は、白色破線側ははみ出しが可能で、黄色実線側からははみ出し不可です。
追い越しの手順
ここでは、追い越しの手順を紹介します。正しい手順を踏むことで、追い越しによる事故のリスクを軽減しましょう。
追い越し時の確認ポイント
追い越しをする時は、以下のポイントを確認しましょう。
[道路環境の確認]
・追い越し禁止場所ではないか
[前方の確認]
・対向車が来ていないか
・追い越し後安全に戻れる車間距離があるか
[後方の確認]
・後方の車両が自分を追い越そうとしていないか
[追い越す車両の確認]
・追い越す車両がさらに前の車両を追い越そうとしていないか・追い越す車両の速度や進路に変化が無いか
追い越し時の注意点
追い越しをする際には、安全な側方間隔を保持しましょう。道路交通法で明確な基準は示されていませんが、安全な間隔を取る義務については明記されています。
[側方間隔の目安]
・自動車を追い越す場合:1m以上
・自転車、歩行者を追い越す場合:1.5m以上が望ましい
また、合図を出すタイミングも非常に重要です。遅れると違反になり、事故の典型的な原因となります。
[合図の基本ルール(道路交通法53条)]
・追い越し開始の3秒前に右ウインカーを出すこと
・追い越し後、元の車線に戻るときは左ウインカーを出すこと
[追い越しの流れ]
①3秒前に右ウインカーを出す
②右へ進路変更して追い越しを開始
③追い越し完了後、追い越した車両と十分な距離をとる
④左ウインカーを出し元の車線へ戻る
[よくある違反や事故]
・合図が遅く、後続車と衝突してしまう
・合図なしで追い越しをする(追い越し方法違反)
・戻るときの左ウインカーが遅く、追い越した車両と接触する
左側から前に出てよいケース
〇前車が右折のために右側に寄っている場合
前車が右折のために道路の中央(右側)に寄っていて左側に十分なスペースがある場合は、左側から前に出ることができます。このケースは車線変更をしていないので、追い越しではなく追い抜きの扱いとなります。
ただし、車線変更をして前に出た場合は追い越しになるため違反です。
×違反となるケース
・車線変更して左側から追い越す
・黄色実線をまたいで左側へ出る
・路肩を走って左側から抜く
・バス停の左側を通って抜く
いずれも、追い越し方法違反や通行区分違反に当たります。
トンネル内で追い越しする際の注意点
追い越しが認められているトンネル内で追い越しをする際には、以下の3つのポイントを意識しましょう。
出入口付近で追い越ししない
出入口付近での追い越しはやめましょう。
出口付近は、白やシルバーなど明るめの車が太陽の光に照らされることで見にくくなる「蒸発現象」が起こりやすいとされています。車の存在に気づかないことで正面衝突などのリスクが高まるため、注意しましょう。
入口付近も明暗順応の遅れから視界が一時的に悪化するため、事故につながる可能性が高いとされています。追い越しは避けるようにしましょう。また、見通しのよい直線区間を選ぶことも大切です。
車間距離に注意
トンネル内では特に車間距離に気をつけましょう。トンネル内は景色の変化が少なく、思ったよりも速度が出やすくなっています。
そのため、意図せず車間距離が詰まりやすく、衝突事故のリスクが高まります。衝突によるリスクを軽減させるためにも、車間距離に注意して余裕を持った追い越しを行うことが大切です。
追い越した後は元の車線に戻る
追い越した後は、追越車線から元の車線に戻りましょう。追い越し車線を走行し続けると、危険な場合があります。
トンネル内に限らず、理由なく追越車線を走行し続けるのは避けたほうが無難です。特にトンネル内では圧迫感があり、無意識に幅寄せしてくる車もあるため気をつけましょう。
トンネル内における緊急時の対処法
トンネル内で緊急事態が起こった場合は、どのように行動するとよいのでしょうか。万が一のときに備えて対処法を知っておきましょう。
故障・事故の場合
車両の故障や事故などが起きた際には、ハザードランプを使って後続車に停止の合図をしましょう。可能であれば、非常駐車帯まで自走して停止します。
停止後は同乗者を非常口などの安全な場所に避難させた上で、停止表示器材を設置します。道路交通法第75条11によって、停止表示器材の設置が義務付けられており、設置しないと「故障車両表示義務違反」に問われる可能性があります。普通車は反則点数1点、反則金6,000円となるため注意しましょう。
その後、非常電話もしくは携帯電話で、道路緊急ダイヤル「#9910」または110番に通報しましょう。トンネル内では発煙筒が使えないこともあるため、LED非常信号灯を用意しておくと安心です。
火災の場合
トンネル内で火災が起きたことがわかったら、ハザードランプで後続車に停止の合図を出しましょう。緊急車両が通行できるように車を左側に寄せて停止します。
サイドブレーキをかけてエンジンを切りますが、救助活動で車を動かす可能性もあることから、キーは残しておきます。その後、警報盤に表示される案内指示や放送、非常口案内表示に従って避難しましょう。
まとめ
トンネル内での追い越しは、正面衝突の危険性があるため原則として禁止されています。ただし、条件によっては追い越しが可能なケースもあり、追い越しの可否はトンネルによって異なります。道路の状況や車両の状況などを確認して、安全に追い越しをしましょう。
追い越しは操作が複雑で事故の原因になりやすい行為です。特に速度の乱れは追い越しの判断を狂わせやすいため、普段から加速・減速を滑らかに行えるよう意識して運転するようにしましょう。
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