平均的な出産費用
厚生労働省が発表している「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について」によると、出産費用は以下のように変化しています。
【出産費用の推移】
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全施設の出産費用 (室料差額等除く) |
公的病院の主産費用 (室料差額等除く) |
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平成 28 年 ( 2016 年) |
44 万 5,000 円 |
42 万 2,000 円 |
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平成 29 年 ( 2017 年) |
44 万 8,000 円 |
43 万 1,000 円 |
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平成 30 年 ( 2018 年) |
45 万 4,000 円 |
43 万 9,000 円 |
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令和元年 ( 2019 年) |
46 万円 |
44 万 4,000 円 |
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令和 2 年 ( 2020 年) |
46 万 7,000 円 |
45 万 2,000 円 |
出産費用は年間平均 1 %前後で増加しており、平均的な出産費用は 45 万円前後となっています。また、私的病院よりも公的病院の平均出産費用の方が安い傾向にあり、地域によって費用に差があります。都道府県別に見ると、最も高い地域は東京都です。
分娩方法別に出産費用の目安
出産費用は分娩方法によっても異なります。分娩方法別の出産費用の目安も確認しておきましょう。
自然分娩の費用の目安
自然分娩とは、医療処置をすることなく陣痛がきて、経腟で産まれる分娩方法のことです。健康保険は適用外で全額自己負担が原則です。厚生労働省によると、自然分娩の平均費用は 50 万 3,000 円(令和 5 年 5 月時点)となっています。
※参考: 出産費用の見える化等について|厚生労働省
帝王切開の費用の目安
帝王切開は、何らかの理由で自然分娩が困難な状態のときに、手術により赤ちゃんを取り上げる出産方法です。手術が必要なため医療行為となり、異常分娩に分類されます。自然分娩の費用に加えて手術費用が必要ですが、手術費用や入院費に対して健康保険が適用となります。また、民間の医療保険も保障対象です。
あらかじめ手術日が決まっている予定帝王切開の平均費用は 20 万 1,400 円、緊急帝王切開の平均費用は 22 万 2,000 円です。
和痛分娩・無痛分娩の費用の目安
和痛分娩・無痛分娩は、麻酔などを使って出産時の痛みを軽くする出産方法です。費用は病院によって異なりますが、自然分娩と同様に健康保険は適用されません。自然分娩の費用に加えて麻酔費用などがかかるため、一般的には自然分娩よりも高額になります。
出産費用の内訳ごとに金額の目安
出産費用と一口にいっても、具体的に何にいくらくらいかかるのでしょうか。出産費用の内訳ごとに平均金額の目安を解説します。
妊婦健診費用
まず必要になる費用は、妊婦健診費用です。妊婦健診とは、妊婦さんと赤ちゃんの状態を確認するために定期的に実施される健診のことです。公的医療保険の適用外ですが、各自治体が発行してくれる補助券を利用すれば、全額負担にはなりません。
妊娠初期から中期にかけての健診は4週間に1回程度で、自己負担額は1回1万円前後です。中期から後期になると健診は2週間に1回、もしくは1週間に1回となり、自己負担額は1回1,000円~3,000円程度になります。
入院・分娩費用
実際に分娩する際の費用は、入院する病院や分娩方法によって異なります。入院・分娩費用の内訳は、入院費、分娩費、室料差額、新生児管理保育料などです。ただし、後述する出産育児一時金で補填されます。
先述したように、帝王切開の場合は健康保険が適用されますが、出産時の状況によってはさらに費用がかかる可能性もあります。
マタニティ・ベビー用品
妊娠中は妊婦さんの体の変化にあわせてマタニティ用品が必要になりますし、産後は赤ちゃんが使うベビー用品も必要です。 マタニティ用品は 3 万円前後、衣類やおむつ、ベビーカーなどのベビー用品 に は 10 万円から 15 万円程度かかります。 周りの人からおさがりを譲り受けたり、レンタルサービスを利用したりすれば、費用を抑えることも可能です。
妊娠や出産にかかる費用は保険が適用されない
妊娠や出産は病気ではないため、原則として公的な健康保険は適用されません。一方、帝王切開分娩時の手術費用、妊娠高血圧症候群にり患した場合の処置費用、陣痛促進剤の投与費用などには保険が適用されます。
ただし、異常の予防目的だった場合や、予定日を超えたために促進剤を使用したものの異常なく分娩した場合は、保険の適用外です。
出産時に利用できる補助金制度
出産費用は大きな出費になりますが、補助金制度を活用することで負担を減らすことができます。出産時に利用できる補助金制度は 3 つあります。
1.出産育児一時金
公的医療保険に加入している人が妊娠4か月(85日)以上で産科医療補償制度加入の医療機関などで出産すると、一児あたり50万円を受け取れる補助金制度です。令和4年3月31日までは42万円でしたが、令和5年4月1日以降、金額が引き上げられました。
加入している公的医療保険が直接医療機関に支払う直接支払制度か、被保険者が一時金の受け取りを医療機関に委任する受取代理制度のいずれかで受け取ります。
2.出産手当金
出産前後の期間に、働けなくても収入面で不安が生じないよう設けられた補助金です。出産を理由に会社を休んだ場合に、被保険者の標準報酬日額 ×3 分の 2 相当が支払われます。対象期間は出産日または出産予定日より 42 日前から、出産日の翌日以降 56 日までです。健康保険に加入している人が対象で、国民健康保険に加入している人は適用されません。
3.産科医療補償制度
分娩時に赤ちゃんが重度脳性麻痺となってしまった場合の補償金で、 2009 年に創設されました。「在胎週数(妊娠週数)が 28 週以上」「先天性または新生児期の要因以外の場合」「麻痺が身体障害者手帳の 1 ・ 2 級相当」の要件を満たした場合に支払われます。補償申請の期限は子どもが満 5 歳の誕生日までです。
出産時に利用できる助成制度
出産時に利用できる助成制度もいくつかあります。出産前にしっかりチェックしておきましょう。
妊婦健康診査受診票
妊娠届出書を提出すると、自治体から交付される妊婦健診の補助券です。母子手帳と同時に交付されるケースが多く、指定医療機関等で健診する場合に検査費用が助成されます。 一般的に 、 妊婦健康診査受診票が 14 枚、妊婦子宮頸がん検診受診票が 1 枚、妊婦超音波検査受診票が 1 枚です。助成金額や助成が受けられる項目は、自治体によって異なります。
国民年金保険料の産前産後期間免除制度
出産予定日もしくは出産日の前月から 4 か月間にわたり国民年金保険料が免除される制度です。国民年金の第 1 号被保険者の出産が対象となります。第 2 号被保険者および第 2 号被保険者に扶養されている人は対象ではありません。申請は出産予定日の 6 か月前から可能です。
出産費貸付制度
事前に手続きを行えば、出産育児一時金が支給されるまでの間お金を借りられる制度です。無利子で、限度額は出産育児一時金支給見込額の 8 割相当となっています。返済は出産育児一時金からとなり、借りていない 2 割相当は妊婦さんに返されます。
厚生年金保険料等の免除
申請すると、出産日もしくは出産予定日の 42 日(多胎妊娠であれば 98 日)前から産後 56 日までの間で、出産や妊娠により仕事をしていなかった期間の厚生年金保険料が免除されます。対象となるのは第 2 号被保険者として出産する人、もしくは満 3 歳未満の子どもの育児をするために育児休暇を取る人です。
出生時育児休業給付金
出生日から 8 週間を期間として、男性が育児休暇をとったときに支払われる給付金です。 4 週間以内であれば 2 回まで分割が可能です。雇用保険に加入している人が対象で、これまで賃金が支払われた期間や休業中の就業日数、労働契約の期間などの要件を満たしたうえで申請すると受け取れます。
支給金額は休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数 × 67% で、休業開始時賃金日額には上限があるため注意が必要です。また、期間中に事業主から賃金が支払われた場合は、その金額によって支給額が異なります。
育児休業給付金
雇用保険の被保険者が、 1 歳未満の子どもの育児を目的として育児休業を取得すると受け取れる給付金です。要件を満たせば、母親と父親が両方育児休暇を取得する場合、子どもが 1 歳 2 か月になるまで、母親なら産後休業期間とあわせて最大 1 年間、父親は出生時育児休業期間とあわせて最大 1 年間まで給付されます。
2 回まで分割が可能で、支給額金額は休業開始時日額 × 休業期間の日数 ×67 % (育児休業開始から 181 日目以降になると 50 %)です。支給要件が細かく設定されているため、確認しておきましょう。
高額療養費制度
同一月内の医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分の金額が払い戻される制度です。公的医療保険の対象となる出産が対象なので、自然分娩は対象外となります。
また、事前に帝王切開になることがわかっているときなどは、加入している健康保険に限度額適用認定証の申請をして認定証を使用すると、医療費を抑えられます。
医療費控除
1>年間に世帯でかかった医療費が 10>万円を超えると、一定の所得控除が受けられます。定期検診や交通費などの>通院費用>が対象で、控除を受けるには確定申告が必要です。
出産にはいくら用意すべき?
妊婦健診の費用は、自治体の補助券を利用すれば 2 万 5,000 円~ 5 万円程度が目安となります。出産費用の平均額は 40 万~ 50 万円程度ですが、出産育児一時金を利用できる場合は自己負担額を大きく抑えることが可能です。
出産費用をできるだけ抑えるコツとは
出産後には子どもを育てるためのさまざまな出費が必要となるため、出産費用はできるだけ抑えたいと考える方も多いのではないでしょうか。ここからは、出産費用を抑えるコツを解説します。
複数の病院を比較検討する
出産費用は病院によって異なるため、複数の病院を比較検討して予算にあう病院を探しましょう。その際、入院時に用意する必要のある持ち物も一緒に確認しておくと安心です。
ベビー用品などをすべてそろえようとしない
マタニティ用品やベビー用品は最初からすべてそろえる必要はありません。人によっては使用しないものもあるため、必須のものから準備して、必要に応じて買い足すのがおすすめです。
レンタルサービスを利用する
A 型ベビーカーやベッドメリーなど、一定期間しか使用しないものは、レンタルサービスで調達するとよいでしょう。使いづらい、あわないなどの場合でも他のものと交換してもらえるというメリットがあります。複数のサービスや料金を比較して選びましょう。
入院時は大部屋を選ぶ
入院時に個室を選ぶと追加の料金が発生します。他の人が一緒でも気にならない、できるだけ費用を抑えたいという場合は、大部屋を選ぶとよいでしょう。
まとめ
出産費用の平均額は毎年少しずつ上がり続けています。地域や出産する病院・助産院、出産方法などの組み合わせによって金額が異なるため、さまざまな面を考慮して出産プランを検討しましょう。自分が使える補助金制度や助成制度についても調べてみて下さい。
出産には、ある程度の費用がかかります。いつか子どもがほしいと考えている人や妊活中の人、出産を控えている人は、自分で負担するお金がいくらくらいになるのか気になるのではないでしょうか。この記事では、平均的な出産費用やできるだけ費用を抑えるためのコツを解説するので、